事例解説

事例分野

詐欺・受け子・出し子

事例の概要

 被告人は、数か月前に別件で保護観察付き執行猶予の判決を受け、今回、詐欺事件で再度逮捕・起訴されてしまいました。
 被害者と示談したくとも、被告人も自ら示談金を捻出することが不可能な事案でした。親族に支援を求めようにも、かねてより関係は極めて険悪でした。

弁護活動の方針

 保護観察付き執行猶予の判決は、原則として再度の全部執行猶予を付与することはできません(刑法25条2項)。
 しかしながら、本件は別件の時点で詐欺事件についても起訴可能であり、詐欺と別件が手続の関係上、異なる裁判で審判されているに過ぎない事例でした。
 仮に数罪を併合して起訴していたとすれば、執行猶予となる可能性がある類型である場合には、例外的に再度の全部執行猶予を付することができます(このような量刑上の利益を「併合の利益」といいます。)
 もっとも、再度の執行猶予を獲得するためには、被害者との示談が不可欠でした。
 そこで、被告人と親族を説得して示談を行い、かつ法廷にて併合の利益を主張する方針としました。

結果

 被告人の親族への説得が功を奏して示談金を捻出することができ、被害者との示談に至りました。
 また判決において、併合の利益の主張が認められ、再度の執行猶予付判決が言い渡されました。検察官の控訴はなく、本判決は確定しました。

弁護士のコメント

 執行猶予付判決を受けたのちに再犯をすれば執行猶予が取り消されることはご存じの方も多いかと存じます。たしかに、再度の執行猶予は無罪に準じるくらい獲得が難しいものです。
 本件の被告人にも、当初は厳しい見通しは伝えておりました。しかしながら、被告人が諦めない様に励ましながら接見を重ねるうちに、再度の執行猶予獲得もありうると判断しました。
 刑事事件では、事実関係をしっかりと傾聴することがカギとなります。最初から獲得が難しいと決めつけるのではなく、数々の事情から、最良の解決を導くことを諦めない心が判決につながったものと考えます。