事例解説

事例分野

危険運転・あおり運転

事例の概要

 被告人は片側二車線の道路の右側を直進走行していました。被告人が方向指示器を出した上で左側に車線変更をしようとした際、後方から左側車線を直進走行してきた車両と接触しそうになりました。後方車両が被告人運転車両との衝突を回避しようとして左側に方向転換しようとしたものの、制御不能となり、歩道に乗り上げ、建造物に衝突し、被害者は亡くなりました。そこで、被告人の方向指示器を出したタイミングが遅れたことが過失にあたるものとして、業務上過失傷害致死の公訴事実で起訴されました。
 本件では、結果的に方向指示器を出したタイミングが被害者車両と接触する直前であった可能性はあるものの、被害者運転車両が法定速度を時速約40キロ以上も速度超過して運転していたことが明らかであった。

弁護活動の方針

 被告人において、後方を確認した上で方向指示器を適切なタイミングで出すべき注意義務があったとしても、後方から法定速度を時速40キロ以上も速度超過して走行してくる車両の存在まで想定することは困難であり、過失を認めるべきではない(いわゆる「信頼の原則」)と主張しました。

結果

 被告人に過失が無いものとして無罪判決が言い渡されました。ただし、検察側が控訴し、二審以降は弊所担当ではない為、最終結論については把握していません。

弁護士のコメント

 交通事故は普通に生活している中である日急に降りかかってくるものであり、何の心構えもなく刑事責任を追及される立場に立たされてしまいます。本件の相談者も困難な状況に陥りつつも、弁護士に対して自身の見解を精一杯に伝えてくださいましたので、弁護士もその思いを 法的主張に落とし込んで精一杯対応させていただきました。その結果、第一審ではありますが無罪判決を獲得するに至ったというものでした。